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薬剤師としての矜持

  • 執筆者の写真: 斬馬 剣禅
    斬馬 剣禅
  • 2024年3月14日
  • 読了時間: 5分

更新日:2024年3月15日

調剤する薬剤師

自己紹介も兼ねて、なぜ自分が薬剤師になったのか、

そして、様々なキャリア経験を通じて「薬剤師」という軸が自分に合ったからこそ到達できた領域とは何だったのかを書いてみようと思う。


薬剤師のキャリア相談なら


私は今カナダとアメリカで、世界でも有数の人材が集まる、

シリコンバレーのデジタルヘルス企業に勤めつつ、

サイドワーク的にはサポート可能な範囲で個人事業のサポートを行っている。


中学高校時代は音楽にのめり込んでいた。

音楽で食べられなかった時の保険という名目で、薬学部への進学を許してもらった。


大学に入ると、薬と人間の健康が極めてロジカルに説明される薬学の世界にのめり込んだ。

自分でも驚くほど、すっかり薬学に魅了されていたのだ。


朝は暗いうちに下宿からバイクで登校し、図書館が空くのを暗記カードを眺めながら待った。

1限が始まるまで図書館の最新の科学雑誌と教科書を読み漁り、知識を詰め込んだ。

午前の授業は一番前で聴講し、午後の実習では目の前で起こるすべての現象を自分のものにしようと必死だった。

夜になると毎晩のように飲み会に興じ、狭い友人宅で朝までゲームと宅飲みが続いた。


そんな3年間が過ぎ去り、成績も学年で常にトップクラスだった。

しかし、進路に迷っていた。


周りの友人は、大半が製薬企業や薬局・病院への就職活動をはじめたが、

私は「画期的な新薬だけが病気の人を救える」のだから、研究に進もう。

そう半ば自分に言い聞かせて大学院進学を選択した。


当時は薬学部も4年制であり、最終学年の頃は、

大学院受験と病院・薬局実習、卒業試験、国家試験と、目の回るような忙しさになった。


大学院も希望通りに、東京大学、京都大学、東京医科歯科大学に合格した。

国家試験の模試も全国で2番だった。


・・・と、ここまでは順風満帆だった。


まず、病院実習で自分の進もうとしていた道をもう一度考え直す出来事があった。そしてそれは今も解決できない問題を提示している。


まず、指導教官と担当していたがん患者さんが亡くなったのが、当時の学生としてはショックが大きかった。

当時最も有効とされる薬が処方されていた患者さんだったにもかかわらず、殆ど効果があったのかどうかすら私にはわからないくらい、がんという病気の圧倒的な力に足がすくんだ。

このとき、自分は研究にせよ働くにせよ、がん領域には行けないと思った。


また、別のがん患者さんは自宅で抗がん剤を服用しているはずなのに、

実際には服用していなかったということも起こった。

これがどれだけまずいことなのか、がり勉薬学性ならば「知識的には」わかるだろう。


しかし、指導教官が服用していない理由を尋ねると、あまりに意外な回答が返ってきたのっだった。


「がんの薬を見ると、自分ががんであることを思い出してしまう。その方が、がんで死ぬより辛い」


そんなある日、母が心筋梗塞で倒れた。

一命はとりとめたもののかなりまずい状況であった。


母も上述の患者さんと同じく、高脂血症の薬を飲んでいなかったのだ。

理由も同じ「高脂血症であることを認識したくないから」というものだった。

検査も日に日に悪くなる数字を見たくないのだという。


画期的な新薬こそが人々を救うと信じ切っていた私は、愕然とした。

発展途上国でもないのに、最高水準の薬も医療も手に入るのに、

結局、ラストワンマイルは「患者のこころ」なのだと。。。


新薬の研究を続けていても、これらの記憶が亡霊のように私を苦しめ続けた。

しかし、そこに答えを見出せずにいたし、

事実、多くの製薬企業は、上記のようなことを知っていて、それでも生存期間が少し伸びる薬を必死に開発していることに気がついた。


暫くして「患者のこころ」を動かすことが答えだと気づく。

そして、私は白衣を脱ぐ選択をした。つまり、経営コンサルタントとして、製薬業界にこのことを伝えなければならない。そして、患者のこころをもっと理解したいと思うようになった。


ココが私の人生の分水嶺であった。


もう一つの「ありえた自分」に時々思いを馳せる。

自分が日本にいたら、あの時別の選択をしていたら。


患者さんのこころを動かして患者さんを救うのは方法は2つあると思う。

1つは、激務に追われながら企業を通じてそれを行う、今の自分が関わっているアプローチ。


そしてもう1つが、薬剤師として直接患者さんに影響を及ぼす方法だ。


もしあのとき、薬剤師として働く選択をしたならどんな自分になっていたのだろう。

定時に帰宅して、家族とゆっくりと過ごしていただろうか?

休日には家族や友人とプライベートを謳歌できていただろうか?


このブログを読んでいただいた方には、その選択肢を捨てないでほしい。

ある人は出産育児が一段落したタイミングかもしれない、

ある人はMRを早期退職する覚悟を決めかねている方かもしれない、

ある人は研究者ではない自分をもう一度発見したい人かもしれない、

ある人は薬剤師をやっていて、引っ越しや職場環境を変えるために、別の場所に移動を考えている人かもしれない、


もし薬剤師の資格を持っていているならば、

どのような状況であれ、一度無料の範囲でも誰かに相談してみてほしい。


その際、プロのエージェントに相談をすると客観的に状況を見ることができる。

例えば、ブログ冒頭に張ったバナーのエージェントさんや、ジョブデポ薬剤師はこの手の相談にはかなり親身になってくれるそうだ。


まずは人生相談をするような気持ちで一歩を踏み出し、

その先の幸せを掴んでほしい。

もし、分水嶺に立つ自分に声を掛けるなら、

そう言っただろう。


時折、しまったはずの薬剤師としての矜持が疼き出す事がある。

薬の専門家として、患者になにかできているのだろうか?

製薬企業や研究側からだとその「手触り感」がなかなか得られない。


是非、日本で薬剤師の資格を持っているならばそれを使い倒して幸せになってほしい。



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